海の向こうへ、小さな旅。異文化に出会う寺泊

魚の市場通りや海鮮で人気の寺泊ですが、楽しみ方はそれだけではありません。海辺の町を歩けば、スパイスの香り、異国の雑貨、沖縄のアイス、本場のイタリア料理、海を眺めながらととのう時間まで、まるで世界を旅するような出会いが待っています。

いつもの寺泊を少しだけ違う角度から眺めれば、まだ知らなかった景色や味、文化が見えてくるはず。次の休日は、「異文化に出会う寺泊」へ出かけてみませんか。

①父と母の味を受け継ぎ、寺泊で進化する南インドカレー

両親が1995年に東京・神保町で始めた「インドカレーカーマ」の味を、息子の将太さんが受け継ぎ、2024年に寺泊へ移転しました。

看板の「チキンカレー」は、若き日の父が北米で出会った南インドの味が原点。母が日本人の舌に合うよう研究を重ね、父と二人三脚で育てた味です。さらりと軽く、酸味を効かせたカレーは、「またすぐ食べたい!」と長年愛されてきました。

現在は、父の味を守りながら自身の感覚も加えて、新しい「カーマ」をつくっています。新潟の水や野菜のおいしさに驚き、素材を生かして仕上げた一皿。ひと口ごとに、家族が重ねてきた物語と、遠い南インドの風を感じられます。

〇 自家製アチャールで味の変化を楽しむ
カレーと一緒に味わいたいのが、自家製アチャール。スパイスや塩に漬け込んだ玉ねぎや大根などの野菜で、カレーの合間に添えると味がキュッと引き締まります。ひと口ごとに組み合わせを変えれば、スパイスの余韻も違って感じられます。

〇 店主がそっと教えてくれた話
幼い頃、忙しい両親がたまに持ち帰ってくれるカーマのカレーが大好きだった将太さん。温めると家中がスパイスの香りに包まれ、それだけで特別な日になりました。今は毎日スパイスに囲まれているからこそ、あの頃の「特別なカレーの匂い」を感じられないのが残念だとか。

②青い扉の先で出会う、本場ナポリの一皿

野積の崖に佇む白い壁と青い扉の店。イタリア語で「青い扉」を意味する「LA PORTA BLU」は、20年以上長年愛され続ける本格イタリアンです。香ばしい薪窯の香りと南イタリアの街を思わせる空間で、本場の味を届けています。

看板メニューは「真のナポリピッツァ協会」認定のピッツァ。小麦粉、水、酵母、塩だけでつくる生地を職人が手で伸ばし、薪窯で焼き上げます。

定番のマルゲリータから、国産レモンと自家製サルシッチャ、リコッタチーズを合わせた「アマルフィ」まで15種類以上。パスタもドルチェもどの料理も伝統技法に忠実。一口味わえば、ここが寺泊であることを忘れてしまいそうです。

〇 旬の果実に出会う、自家製ジェラート
食後のお楽しみは、常時8種類ほど並ぶ自家製ジェラート。定番のバニラやチョコレートに加え、弥彦産パッションフルーツや白根産の桃など、新潟の旬の果物を使った味も登場します。その時期だけのひと味に出会えるのも楽しみです。

〇 店主がそっと教えてくれた話
店主が惚れ込んだのは、席から望む日本海の夕景。特に10月から4月、晴れて空気が澄み、海が凪いだ日には、夕陽が海へまっすぐ伸びることがあります。沈みゆく太陽とともに佐渡のシルエットが浮かぶ、年に数回の特別な瞬間。出会えたらラッキーです。

③ここでしか出会えないカゴバッグ、あなたのお気に入りは?

2013年にオープンした「グローカルスタイル」は、ベトナムをはじめ、アジアのものづくりと出会える店です。

なかでも人気なのが、ベトナムのプラカゴ。荷物の梱包にも使われる素材を、村の人たちが一つひとつ手作業で編み上げています。軽くて丈夫、水にも強いのが魅力です。現地で見たカラフルで装飾的なカゴを、あえて色や形を整理し、洗練されたデザインへと仕立てたオリジナルの商品です。

店内には、ネパールやインド、インドネシア、ラオスの服飾雑貨やアクセサリー、食器も並びます。手に取れば、手しごとのぬくもりや異国の色彩に心が弾み、「これ、好きかも」という一品との出会いが旅を彩ります。

〇 お気に入りとの偶然の出会いを楽しむ
軽くて水濡れにも強いプラカゴは、寺泊の海辺散策にもぴったり。色や形を見比べながら、「どっちが似合うかな?」と選ぶ時間も楽しんで。ものがあふれる今だからこそ、自分だけのお気に入りを見つける喜びがあります。

〇 店主がそっと教えてくれた話
オーナーの中西さんは、多い時には3カ月に一度アジアへ。最近のお気に入りはラオスで、「何もない」がある場所に惹かれるそう。首都ヴィエンチャンの街並みを眺め、何もしない時間を贅沢に感じたのだとか。寺泊にいるのは週1回ほど。もし出会えたら、ぜひ旅の話を聞いてみてください。

④しびれる辛さと、もちもち食感。寺泊で味わう中国の日常

扉を開けると「いらっしゃいませどうぞー!」と元気な声。「李福記」では、中国で日常的に親しまれている「麻辣湯」を味わえます。

まず目に飛び込むのは、野菜や春雨、肉や魚の団子など40種類以上の具材。好きなものを好きなだけ選び、量り売りで自分だけの一杯をつくります。花椒のしびれと唐辛子の辛さが効いたスープは、辛さは4段階。牛骨を長時間煮込んだ自家製スープに牛乳を加え、まろやかに仕上げています。

もちもちの春雨をすすれば、異国の食文化がぐっと身近に。さらに、8種類の調味料を合わせた自家製ダレの「油淋鶏」も人気。黒酢の酸味が効いたさっぱりとした味わいは、ご飯にもお酒にもぴったりです。

〇 好きな具材を選ぶところから旅は始まる
40種類以上の具材を前にすると、つい「あれもこれも」と手が伸びます。春雨だけでも種 類が豊富で、さつまいも麺やとうもろこし麺、もちもち食感のミーシェン(米粉麺)やブ ンモジャ(デンプン餅)など珍しい春雨に出会えます。

〇 店主がそっと教えてくれた話
辛さは食べてみてから調整できます。もっと辛くしたい人には「追い辛ダレ」を、少し辛かった人には砂糖や黒酢を用意。特に黒酢は、甘みとまろやかさが加わり、辛さをやわらげてくれるそう。自分好みの味に変えていくのも、麻辣湯の楽しみ方のひとつです。

⑤海を眺めながら、旅の余白をととのえる

老舗旅館「住吉屋」の隣に2023年オープンした「プライベートサウナART」は、寺泊の新しい楽しみ方を提案するサウナ施設です。

扉を開けると、静かな空間。サウナストーンに水をかければ、じゅわっと蒸気が立ち上り、100℃前後の熱気が身体を包みます。しっかり汗をかいたあとは、2階の外気浴テラスへ。海から届く風を感じながら、水平線をぼんやり眺める時間は格別です。

施設名の「ART」は、油絵を嗜む住吉屋の三上さんの思いから。館内には新潟のアーティストの作品も飾られています。食べて、歩いて、眺めて、そしてととのう。魚の街だけではない寺泊を、あなたのペースで楽しめます。

〇 会話も楽しむフィンランド式を体感して
「ロウリュ」を楽しめるフィンランド式サウナ。大小5室あり、1~2名用と3~4名用から選 べます。静かに耐えるだけではなく、フィンランドでは会話を楽しむ社交の場でもありま す。プライベートな空間で、海や旅の話をしながらゆっくり過ごしてみてください。

〇 店主がそっと教えてくれた話
実は、サウナの利用時間内なら本館・住吉屋の大浴場も利用できます。ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉の温泉は、入浴後の肌がつるつるになるのが特徴。サウナと温泉、どちらも楽しめるのがちょっと嬉しいポイント。利用時間や清掃時間は事前に確認しておくのがおすすめです。

⑥寺泊で沖縄とおいもの旅。異文化が交差するNEW TOWN

寺泊の海辺に、ふと沖縄の風を感じる場所があります。2024年にオープンした「NEW TOWN寺泊」は、3店舗が集まる複合施設です。

正面スペースでは「めんそーれ寺泊」が、沖縄発祥の「ブルーシールアイスクリーム」を常時約20種類を販売。爽やかなソーダシャーベット「ブルーウェーブ」や、塩気がクセになる「塩ちんすこう」が人気とか。

さらに、「cocomi SWEET POTATOES & VEGETABLES」が、ねっとり濃厚な焼き芋をはじめ、ジェラートやチュロスなど、さつま芋の新しい楽しみ方を提供。

沖縄の空気感と新潟のおいしさがひとつの場所に集まる、寺泊の新しい立ち寄りスポットです。

〇 買ったスイーツを、好きな場所で
スイーツを購入したら「コーヒーショップKIKI」のカフェスペースでも飲食できます。店内でゆっくり味わうのはもちろん、外のテラス席で海辺の風を感じながら楽しむのもおすすめです。一緒に訪れた方と別々の味を選べば、食べ比べも楽しめます。

〇 店主がそっと教えてくれた話
昨年にはウッドデッキを新設するなど、訪れる人が楽しめるよう少しずつ施設をカスタムしているそう。現在も屋外スペースを使った新しいサービスを考案中とのこと。訪れるたびに何かが変わる、これからが楽しみな場所です。

いつもの寺泊に、まだ知らない景色がある。

寺泊を歩いて、食べて、眺めて、時には立ち止まる。南インドのカレーにスパイスの香りを感じ、アジアの手仕事に触れ、沖縄のアイスで旅気分を味わう。海を眺めながら本場ナポリのピッツァを頬張ったり、サウナで汗を流して潮風に身をゆだねたり。

そこには、魚市場だけでは語りきれない寺泊の表情があります。異国の文化を感じながらも、どこか新潟らしい。そんな土地の魅力は、実際に訪れて、店主と話し、その空気を感じてこそ見えてくるもの。

次の休日は、目的地をひとつに決めず、気になる扉を開けながら、新しい寺泊を見つけてみてください。